ホキ美術館 光と風をかんじて・・・展

千葉県、ホキ美術館へ。電車とバスを乗り継いで行く、大人の夏休み。
静かな住宅地の中にある美術館。昭和の森公園がすぐそばにあって、緑の空気が体を吹き抜けていく。


こちらは、写実絵画専門の美術館。美術館は、原美術館を拡大していくつか連ねた、という印象だった。ギャラリーの形状がRになっているところも似ている。設計は日建設計


エントランスとショップから続く空間は、天井の電球が天の川みたいに配されている。階段部分の手すりは、真っ白の壁と一体化して洗練されている。降りてきた階段を裏側から見ると、暗闇に横一文字の光の筋が段の数だけ見える。その陰影と階段を降りる人の影がコラボして、一瞬アートになった。美しさは、留めておけないものの中にある。


九つあるギャラリーごとに、雰囲気の異なる空間に五感が刺激される。間接照明は、作品を引き立てたり、観る人に寄り添ったりしていた。
一つ目のギャラリーは、片側の外壁の下半分がガラス窓になっていて、木々の緑が目に優しい。絵画の品質保持の為、外光を遮断することが多いけれど、あえて明るく開放的な空間を演出しているのがよかった。光の反射で人影が映ってしまうのも、絵を購入して家に飾ったらこんな感じなのかな、とイメージして、豊かな気持ちになれる。
カフェはギャラリーの間のちょうどいい位置にある。天井が高くて、外の景色を眺めながら一休みできる。一脚ずつ違う椅子は、眺めるのも座るのも楽しい。


絵画と観る人の間には、柵もガラスケースもほとんどない。髪の毛一本一本まで精巧に描かれて、筆跡もなくまるで写真みたい。
写真は『単眼』で、絵画は『複眼』だと、説明書きにあった。写真が一点に焦点を合わせて瞬間を切り取っているのに対し、絵画は人間の目でみたそのままを描いている。写真は「本物」なのに、不思議と、絵画の方によりリアリティーがあるのだ。
過去の一点ではなく、瞬間の重なりがそこにある。それは絵画を収束点として、別の次元へと無限に拡がる。明るい日差しの中ゆらめくカーテン。後ろ姿の裸婦の静かな呼吸。見えないほどの速度で朽ちていく果物。



とある画家さんの、紹介文を読んでいた。『私には世界がセピア色に見えるのです』と。確かに大作のセピア色の風景画がある。微妙な顔をしているかまーの指差す先を見ると、なんと、顔写真には濃い茶色のサングラスがかかっている!それでふたりで声が響かないように、お腹を抱えて笑ってしまった。どうか、画家さんがサングラスを外して、絵を描いていますように。



昭和の森。わーい、と駈け出していきたい緑の絨毯。ハワイの公園みたい。体も心ものびのびした、夏の一日だった。