物語ること、生きること

光を体いっぱいに浴びて、草原に立つ少女。
純粋なこころで、空からのおくりものをうけとった。
ワンピースのすそを、ふわりと風がなででいく。


そんな装丁の絵に誘われて、
はじめて上橋菜穂子さんの本を手にとった。
作家になるまでの道程が、
上橋さんへの取材を通して描かれている。
四分の一ほど読み進めたところで、
読む順序を間違えていることに気付いて、
読むのをやめて、守り人シリーズから読み始めた。


精霊の守り人
『闇の守り人』
『夢の守り人』
まで、一日一冊ペースで読んだ。


一文一文が短くて読みやすい。
ことばが、ぎゅっと心に飛び込んできて、ぱあっと体中に広がる。
物語の強さと躍動する展開に、ぐいぐい引き込まれていった。
情景や心の動きが細やかに表現されていて、私はバルサに、チャグムに、タンダに、トロガイに、自在に変化することができた。


私が最近取り組んでいるテーマが、統合と融合。
自分の光と闇。
自分と他者。
自分と世界。そして宇宙。
どこにも境界線が引けなかった。
今までの考え方と感じ方では限界を感じて、より深く人を理解したいと考えている最中だった。


野心家で、たくみに嘘を重ねて人を利用する、英雄ユグロ。
人の痛みが分からず、無責任に人に夢を見させる、悪意のない木霊の想い人ユグノ。
ユグロもユグノも、その資質はいったいどこからきたのだろう。生まれたときから?痛みと弱さに気付くきっかけが、ずっとなかったのか。弱者の立場に一度も置かれなかったのか。誰にも叱られなかったのか。疑問が渦巻く。
私の中にそれらの資質がない、なんていえない。むしろ私の中にあるからこそ、鏡のように、誰かの中にその肥大化したものを見つけるのだろう。すべての生命は宇宙の一ピース。少し視点を高くしてみると、その人たちは多くの人の浄化を促す、という役割を担っているのかもしれない。
ただ、現実に向き合っていくとき、区別は必要で。ユグノが痛みや弱さを自分のものとして感じられたシーンは、とても印象に残った。それでも風のように去っていくのだけれど。善悪や、被害者加害者をつくるのではなく、それぞれの特性を尊重し、魂を磨きあう仲間として生きていく、そんな世の中を創造していきたい。すべては自分をクリアにすることから。


そして、夢について。
シリーズのタイトルをざっと見て、一番読みたかったのが、『夢の守り人』。
夢って、響きが良くて、あったらいいもののように思う。でも知らず知らず、欲や執着にすり替わっているときもあって。夢の眠りから覚めないで、自分から目をそむけて生きているって、現実にもよくあることなんじゃないかな。夢はあってもなくてもどちらでもいい。
私はどうしてもふわふわ浮いて意識もどこへでも飛ぶ。地球に繋ぎとめて、私のはたらきをしよう。そのために授かった体と心だから。


大切なものを失っても、
見たくもないものを見てしまっても、
だれに嫌われようとも、
だれに忘れさられても。


どの運命や感情の根底にも愛がある。
惜しみなく。
それならば、勇気を出して、祈るよりもっと私にできることがあるのかも知れない。


当たり前すぎて見えていないことに気付かせてくれる、守り人シリーズ
読み終わった後、バルサのように強くといかなくても、どんな私が待っているのかとても楽しみ。
というわけで、
『物語ること、生きること』を読むのは、まだ先のことになりそう。



物語ること、生きること