土と記憶


ある休日の朝ごはん。
平日、夫はおもちとコーヒー、私はパンとハーブティーですませるから、
随分豪華な食卓。


ちあきさんが奈良の柿を、
パン屋さんのさだこが京都からパンを送ってくれた。
奈良の柿は野性味と甘みがあって、
熟す前のしゃくっとした歯ごたえがある。
粉の風味が口いっぱいに広がる、
懐かしいまじめなさだこパン。


時々、過去の記憶のなかに旅をする。
私が何の気なしにしたことに、傷ついただろうな、とか、
ずっと前に聞いた言葉の意味が、今になってわかる、とか。
本当はどうだったか、確かめる術はない。
ありがとうとごめんなさいを、心の中で伝える。
向き合うことでしか手放せない、
ずっとふたをしてきたもの。
そこに気づかせてくれた人。
反省も罪悪感も持っていてもしかたなくて、
これからに生かすだけ。
誰がどんな選択をしたとしても、根底には愛、なのだった。


奈良の土の匂いと、思い浮かぶ大好きな人たちの顔。
内側にぐうっと入り込んでいた目を、ふうと外に向ける。
寛いで、むしゃむしゃ食べたら、
少しずつあたたかく強いエネルギーが体をめぐっていく。