少女と闇のものがたり


少女と闇のものがたり。シルク100%。



少女 「どんどん小さくなって消えてしまいたい、と思うことがあるの。
   お空に帰ってしまいたいって。」


女神 「。。。それはなぜ?」


少女 「わたしは、美しいものだけをみていたいの。
   でも、この世界では戦争も貧困も絶えない。
   怒り、悲しみ、憎しみ、妬み、恐れの気持ちもなくならない。
   そして、その暗いどろんとしたものがわたしの中にもある。
   それがたまらなくいやなの。」


女神 「。。。
   海の底は暗いでしょう?
   空の向こうの宇宙も暗いでしょう?
   闇は、ありがたい必要なもの。
   あなたを輝かせてくれる存在なの。
   ほら、あなたの中にある闇をみてきてごらん。
   怖くないから。」


少女はそろそろと、闇の中に入っていった。
足元の闇を、手のひらにすくってみると、
闇はしばらくもそもそして、やがて閃光を帯びて砕け散った。
また別の闇は、手の中で安心したように空気に溶けた。


『 ・・・!』
だれかが呼んでいる。
少女は声のする方へ駆けだした。
もう闇は怖くなかった。
少女が近づくにつれ、声は大きくなり、
厚い闇の壁をドンドンと叩きながら、
「だして!だして!」と助けを求めていた。
壁の隙間から、赤いものがちらちらと見える。
少女は隙間に手を差し込んで、「こっちよ!」と叫び、
繋いだ手を力の限り引っ張った。


目の前に現れたのは、少女と瓜二つの少女だった。
ただ、目も髪も肌も、すべてが燃えるように赤い。
赤い少女は言った。
「助けてくれてありがとう。
わたしは情熱。
あなたの中にいて、ずっと迎えに来てくれるのを待っていたの。
さあ、行きましょう。」
少女は情熱とともに、にっこり歌いながらもとの世界へ帰っていった。
闇を愛する勇気をたずさえて。